鉄観音 2
自分を安っぽくわかったかのように解説するなんて十代の少女のようだが私は四十一歳だ。
何度か交際もしたし、不道徳な恋もした。
とにかく恋愛体質で求められるとセックスをした。嬉しくてどきどきした。
でも、セックスは上手じゃなかった。教えようとしてくれた男性もいたが学ぶ気は無かった。
これも病気の一つなのかもしれないが、正解がわからないのだ。
セックスだけじゃない。様々なことの形がわからない。作り上げることができない。
子供の時は自分のことがまだそんなにわからずにいたから、勉強にしても絵にしても工作や裁縫にしてもやってみた。
しかし何一つできなかった。どうしたらいいのかもわからなかった。そうして歳を重ねるにつれて自分のことを知っていきどれもやらなくなった。挑戦することもなかった。
やる気を出せば何でもできる、私や私と同じ人間以外の人たちはそう信じている。
自分の力量を知ってしまっている人間はやる気など出せるわけがない。
そんな私に軽蔑の眼差しを向けたり呆れたりする人たちは今まで大勢。
でもさ、そもそもやる気を出していろいろなことをやってみるのがそんなに正しいことなんだろうか?
自分のことを知ってそれなりに過ごしていくことだって間違って無いと思う。
そう大きく言いたいけれど、この散らかった部屋を見ると消極的になる。
こんな環境いいわけがない。それはわかっている。でもやっぱり……そのままにして布団に入ってしまう。だってやる気がないのだから。